
2026年もあと2ヶ月。勤務医が「今年中に間に合う」節税対策と、 もう間に合わないもの
年内の節税は、12月31日がすべての期限です。
残りの期間で実行できる対策と、
今年は間に合わないため来年に備えるべき対策を、
結論から順に仕分けしました。
「間に合う」と言われる対策の中にも、年内の効果が小さいものや、実行すると負担が増えるものがあります。効果の大小を正直にお伝えします。
目次[非表示]
- 1.なぜ節税の期限は12月31日なのか
- 2.今から間に合う節税対策は何か
- 2.1.ふるさと納税:効果は大きく、最も手軽
- 2.2.小規模企業共済:加入資格があれば効果が大きい
- 2.3.医療費控除:年内の支払いが今年分
- 2.4.iDeCo:年内の効果は小さいが、手続きは今がベスト
- 2.5.副収入の経費整理・年末調整の書類提出
- 3.年末に避けるべき「節税」とは何か
- 4.今年はもう間に合わない対策と、来年に向けた準備
- 5.11月・12月の実行スケジュール
- 6.ケース別:あなたは年内に何をすればよいか
- 7.年末に「やらなくてよいこと」を見極めるには
- 8.来年1月1日にすぐ動けるよう、年内に整えておくことは何か
- 9.よくある質問(FAQ)
- 10.まとめ
なぜ節税の期限は12月31日なのか
日本の所得税は、1月1日から12月31日までの1年間(暦年)の所得に対して課税されます。そのため、所得控除や税額控除の対象になる支出・払込みも、この期間内に実際に支払った金額が基準です。申し込んだ日ではなく、支払いが完了した日で判断される点に、年末は特に注意が必要です。
住民税は、前年の所得に基づいて、翌年6月から課税されます。つまり、今年の節税行動は、今年の所得税だけでなく、来年6月からの住民税にも効いてきます。年末に動くことには、二重の意味があります。
節税の手段は、大きく2つに分かれます。1つは所得控除で、iDeCoや小規模企業共済の掛金、医療費控除、生命保険料控除などです。課税される所得そのものを減らし、税率が高い人ほど、軽減額が大きくなります。もう1つは税額控除で、住宅ローン控除や、ふるさと納税の住民税部分などです。算出された税額から直接引かれます。勤務医は税率が高いため、所得控除の効果が大きくなりやすい傾向があります。
今から間に合う節税対策は何か
2026年10月30日時点で、年内に実行でき、実際に効果があるものを順に整理します。効果の大きさについても、正直にお伝えします。
ふるさと納税:効果は大きく、最も手軽
ふるさと納税は、年内の決済・入金が12月31日までに完了すれば、今年分の対象です。上限額の目安は、年収1,500万円で約39.5万円(常勤の給与のみ)で、当直などの副収入があれば、さらに大きくなります。ただし、ふるさと納税は、純粋な節税ではなく、税金の一部を寄附先に前払いし、実質2,000円で返礼品を受け取る制度です。上限を超えた寄附は自己負担になるため、副収入を含めた今年の所得で上限を再計算し、年末に最終調整するのが安全です。
小規模企業共済:加入資格があれば効果が大きい
小規模企業共済は、個人事業主や、小規模な会社の役員のための退職金制度です。掛金は月1,000円から7万円(年最大84万円)で、全額が所得控除になります。給与所得のみの勤務医は加入できませんが、資産管理会社などの役員になっている場合は、加入資格を満たす可能性があります。会社の実態や従業員数などの要件があるため、中小機構への確認が必須です。
年84万円を拠出した場合の税負担の軽減額は、給与年収1,200万円で約28万円、1,500万円で約37万円、2,500万円で約43万円が目安です。ただし、小規模企業共済は、税金を払わなくてよくなる制度ではなく、課税を将来に繰り延べる制度です。共済金を受け取る際に課税され、加入期間が短いうちに解約すると、元本を割る場合もあります。長期で積み立てられる方に向く制度です。申込から加入・初回の引落しまでに数週間かかるため、年内に間に合わせるなら、11月中旬までの申込が目安です。前納を使う場合の控除の扱いは、中小機構・税務署の最新案内を確認してください。
医療費控除:年内の支払いが今年分
医療費控除は、年間の医療費が10万円(または所得の5%のいずれか低い額)を超えた場合に、超えた分を所得控除できる制度です。家族分を合算でき、年内に支払った医療費が今年分になります。今からできるのは、領収書を集計して、10万円を超えそうかを確認することです。申告は来年の確定申告で行います。
ここで注意したいのは、節税のために不要な治療を受けないことです。医療費控除で戻る税金は、支払った医療費より少ないため、支出が増えるだけで、手取りは減ります。もともと予定していた治療や、歯科矯正などを、年内にまとめるかどうかを検討する程度にとどめてください。
iDeCo:年内の効果は小さいが、手続きは今がベスト
iDeCoの掛金は全額が所得控除になりますが、口座開設に1〜2か月かかり、掛金額の変更の反映も金融機関の締切次第です。今から新規加入・増額した場合、今年分に反映されるのは、残り1〜2か月分にとどまり、効果は小さいです。たとえば、月0.8万円の増額なら、年内の増額分は1万円台で、軽減額は数千円です。
それでも、今動く意味はあります。年内に手続きを完了させれば、来年1月から満額(企業年金のない会社員・勤務医で月2.3万円)を12か月分拠出できます。年収1,500万円なら、年間約10万円強の軽減です。年末に慌てるより、今月中に申し込んでおくのが賢明です。
副収入の経費整理・年末調整の書類提出
個人事業や雑所得の副収入がある場合は、年内に支払った事業関連の費用が、今年の経費になります。書籍、学会費、業務用のパソコンなどが典型ですが、私的な支出を混ぜない、根拠のない全額計上をしないことが前提です。給与のみの勤務医には、経費の計上はありません。
年末調整の書類提出も、立派な「年内の節税行動」です。iDeCoの払込証明書や、生命保険料控除証明書の添付漏れは、控除の取りこぼしに直結します。提出期限は11月中旬から12月上旬の勤務先が多いため、早めに揃えてください。
年末に避けるべき「節税」とは何か
年末は、「今年中に購入すれば節税になる」という提案が増える時期です。不動産の購入や、法人向けの保険商品への加入などが典型です。これらは、節税額より、現金の持ち出しや将来の負担が大きくなることがあります。
たとえば、不動産の減価償却は、年の途中で購入した場合は月割りで計算されるため、年末の購入では今年分の償却費はごくわずかです。節税額は小さく、購入費用、ローン、諸経費の負担は大きくなります。また、法人向けの保険は、保険料が損金になる範囲が限定されている商品が多く、解約返戻金や課税のタイミングまで含めて、トータルの損得を確認する必要があります。
節税の基本は、「支出が増えて税金が減る」ではなく、「必要な支出を、税制上有利な形にする」ことです。税金を1万円減らすために、3万円を使っては、手取りは減ります。節税のためだけに支出を増やす提案は、断る勇気も必要です。提案を受けたら、「現金ベースで、10年・20年後にいくら手元に残るか」を、書面で出してもらい、第三者に確認してもらってください。
今年はもう間に合わない対策と、来年に向けた準備
法人の設立は、今年の税負担には効果がありません。法人は設立日から効果が始まり、設立前の収入を法人に移せないためです。来年1月初旬の設立を目指すなら、今月から来月にかけて、勤務先の兼業規程の確認と、税理士への相談を始める必要があります。詳しくは、法人化のタイムリミットを解説した別のコラムをご覧ください。
役員報酬や社宅制度の導入も、事業年度の途中からの変更には制約が大きく(役員報酬は原則として毎月同額にする必要があります)、今年分には間に合いません。来年の事業年度の開始に合わせて、税理士と設計します。
iDeCoの12か月満額拠出も、今年分は間に合いません。年内に手続きを完了させ、来年1月から満額で始めることが、実質的な対策です。また、副収入のある方は、来年に向けて、契約主体や経費の整理を始めておくと、年明けにスムーズに動けます。
そして、過去の控除漏れの是正も、今から動ける重要な対策です。過去のiDeCoの添付漏れや、申告し忘れた医療費控除は、原則として5年以内なら、還付申告で取り戻せる可能性があります。今年の節税ではありませんが、お金が戻ってくる点では、同じ価値があります。
11月・12月の実行スケジュール
11月上旬〜中旬は、今年の収入見込みを確定する時期です。当直・外勤・講演などの副収入を含めた今年の見込みを出し、ふるさと納税の上限額を再計算します。小規模企業共済の加入資格があるかを確認し、対象なら申込をします。年末調整の書類と証明書を揃えて、勤務先に提出します。同時に、iDeCoの新規加入や増額の手続きを始め、法人化を検討するなら、税理士に相談を依頼します。
11月下旬は、ふるさと納税の寄附を大半済ませる時期です。残りは、年末の収入確定後に調整します。医療費の領収書を集計して、年間10万円を超えるかを確認し、副収入の経費の領収書も整理します。法人化を検討する場合は、勤務先の兼業規程を確認します。
12月上旬〜中旬は、最終調整の時期です。ふるさと納税は、収入が固まった段階で、上限の残り枠を寄附します。ワンストップ特例を使う場合は、申請書の送付を済ませます(2027年1月10日必着)。小規模企業共済の前納などの手続きも、この時期までに完了させます。
12月下旬〜31日は、確認の時期です。決済や入金が、年内に完了しているかを最終確認します。年末は金融機関やサイトの処理が遅れ、翌年にずれ込むことがあるため、新しい手続きを始めるのではなく、確認と書類の保管に専念します。翌年2月から3月の確定申告に備えて、領収書や受領証明書をまとめて保管します。
ケース別:あなたは年内に何をすればよいか
ケースA:給与のみの勤務医(副収入なし)は、年内にやることを絞れます。ふるさと納税で、今年の上限額まで寄附し(年収1,500万円で約39.5万円が目安)、年末調整の書類を期限内に出し、iDeCoの新規加入または増額の手続きを今月中に済ませ、医療費の領収書を集計します。これだけで、年内にできることの大半は完了します。
ケースB:当直・外勤の給与や、講演料などの副収入がある勤務医(個人)は、Aに加えて、副収入を含めた今年の所得で、ふるさと納税の上限を再計算します。副収入が経費の発生する性質のものなら、年内に支払った経費を整理します。確定申告が必要になるため、必要書類を年内に揃えておきます。個人事業主として開業届を出している場合は、小規模企業共済の加入資格を確認してください。
ケースC:すでに資産管理会社などの法人を持っている勤務医は、法人の決算月が近い場合に、検討できることがあります。法人が負担すべき経費の支払いを決算期末までに済ませる、小規模企業共済の役員としての加入を検討する、などです。ただし、役員報酬は原則として期中に変更できないため、年内に慌てて動くのではなく、次の事業年度の設計を、税理士と進めてください。
ケースD:医療費が多い家族がいる勤務医は、家族全員の今年の医療費を集計し、10万円を超えるかを確認します。超えそうな場合は、通院の交通費や薬局での支払いも含めて、領収書を保管します。セルフメディケーション税制(特定のOTC医薬品の購入額が一定額を超える場合の特例)との選択も、一度比較してみてください。
年末に「やらなくてよいこと」を見極めるには
年末は、情報があふれ、「今やらなければ損」という空気が生まれやすい時期です。節税で重要なのは、やるべきことを実行することと同時に、やらなくてよいことを見極めることです。
たとえば、効果が小さい対策に時間と労力をかけすぎないこと。年内のiDeCoの増額は、効果が数千円程度のため、手続きに数時間かけるなら、ふるさと納税の上限確認や年末調整の書類確認のほうが、効果は大きくなります。また、節税のためだけの高額な支出も避けるべきです。税金が減る額は、支出した額より小さいのが通常で、手元の現金は減ります。
さらに、理解できない商品には、年内に決めなくて構いません。「年内に契約しなければ枠がなくなる」「今月末までの限定」といった言葉は、判断の時間を奪うための典型的な表現です。1週間待ち、第三者に相談してから決めることで、後悔する選択の多くを避けられます。
来年1月1日にすぐ動けるよう、年内に整えておくことは何か
年内の節税は、来年への準備でもあります。年内に整えておくと、年明けから効果を最大化できることがあります。
- iDeCo:年内に手続きを完了し、来年1月から満額(月2.3万円など、勤務先の企業年金の有無で上限が異なります)で拠出を始める。
- 新NISA:来年の枠(成長投資枠240万円+つみたて投資枠120万円、合計年360万円)を、年初から計画的に使えるよう、積立設定を見直す。
- ふるさと納税:来年は、1月から分割して寄附する計画を立て、年末の駆け込みを避ける。
- 記録の仕組み:領収書、請求書、証明書を、年間を通じて整理できる封筒・ファイル・アプリを決めておく。
- 専門家:法人化や副収入の整理を検討するなら、医師の税務に詳しい税理士を、年内に決めておく。
来年の1月から動ける人と、年末に慌てて動く人では、1年間の手取りに数十万円の差が出ることがあります。年内の2か月は、今年の節税だけでなく、来年の土台づくりの期間でもあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 今年中にiDeCoを始めれば、今年の税金は下がりますか?
A. 下がりますが、効果は小さいです。口座開設に1〜2か月かかり、年内に拠出できるのは残り1〜2か月分にとどまるためです。年内に手続きを終えれば、来年1月から満額で使えるため、来年以降の効果を重視してください。
Q. 勤務医でも小規模企業共済に加入できますか?
A. 給与所得のみの勤務医は加入できません。個人事業主、または小規模な会社の役員が対象です。資産管理会社などの役員になっている場合は、加入できる可能性があるため、中小機構に確認してください。
Q. 年末に不動産を購入すれば、今年の節税になりますか?
A. 年の途中で購入した場合、減価償却費は月割りで計算されるため、年末の購入では今年分の節税額はごくわずかです。節税を目的に年末の購入を急ぐことは、お勧めできません。
Q. ふるさと納税の上限額は、どう確認すればよいですか?
A. 各ふるさと納税サイトの詳細シミュレーターに、源泉徴収票や住民税決定通知書の数字を入力して確認します。副収入がある場合は、副収入込みの今年の所得で計算してください。年収1,500万円で約39.5万円が目安です。
Q. 今年中に法人を設立すれば、今年の税金が下がりますか?
A. いいえ、下がりません。法人は設立日から効果が始まり、設立前の収入を法人に移せません。12月に設立すると、最初の事業年度が短く、均等割などの負担だけが生じやすいため、年明けの設立が一般的です。
Q. 医療費が10万円に届きそうにありません。何かできますか?
A. 無理に医療費を増やす必要はありません。支出が増えるだけで、手取りは減ります。家族分の医療費を合算できるか、通院の交通費(公共交通機関)や薬局の薬代を含められるか、確認してみてください。
Q. 12月31日に決済したふるさと納税は、今年分になりますか?
A. クレジットカードなら決済完了日、銀行振込なら入金日が基準です。サイトによって受付の締切時刻が12月31日の早い時間に設定されている場合があるため、余裕を持って、12月下旬までに済ませてください。
まとめ
年内の節税は、12月31日までに支払いを完了させたものが、今年分になります。今から間に合い、効果が大きいのは、ふるさと納税と、加入資格のある方の小規模企業共済です。iDeCoは年内の効果が小さいものの、手続きは今がベストです。法人設立・役員報酬・社宅の設計は、今年分には間に合わないため、来年に向けて今月から準備してください。節税のためだけに支出を増やす提案には、注意が必要です。残り2か月は、新しいことを始めるより、「やることを絞り、確実に実行する」ことが、最も効果の出る使い方です。
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