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医療法人化とは?メリット・デメリットと適切な設立タイミング

個人クリニックを運営する医師の中には、「そろそろ医療法人化を検討したい」と考える方もいるでしょう。医療法人化は一般的にポジティブなイメージが強調されることも多い手続きであるものの、デメリットや注意点を把握することなく、見切り発車することは危険です。

当記事では、医療法人化のメリット・デメリットと設立に適したタイミングの見極め方を紹介します。医療法人化に失敗したくない方・病院の実情に適した経営形態を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

目次[非表示]

  1. 1.「医療法人化」の基礎知識 
    1. 1.1.そもそも「医療法人」とは?
    2. 1.2.医療法人と個人クリニック・株式会社の違い
  2. 2.医療法人化のメリット6つ
    1. 2.1.税率格差による高い節税効果が期待できる
    2. 2.2.給与所得者控除が受けられる
    3. 2.3.親族を役員にして所得を分散できる
    4. 2.4.生命保険を法人経費にできる
    5. 2.5.院長の退職金を法人経費にできる
    6. 2.6.社会的信用力が向上する
  3. 3.医療法人化のデメリット4つ
    1. 3.1.持分なし医療法人しか設立できない
    2. 3.2.余剰金の配当が禁止となる
    3. 3.3.接待交際費の取り扱いが複雑となる
    4. 3.4.運営管理の複雑化による業務負担が大きい
  4. 4.医療法人化の適切なタイミングは?
  5. 5.まとめ

「医療法人化」の基礎知識 

医療法人化とは、医師が個人事業主として病院を運営する状況から医療法人が経営する状況に体制変更することです。
医療法人化は多くの場合、病院の経営を長期的に安定させる目的で行われます。また、医療法人化することで、節税効果を狙うことも可能です。

ここからは、医療法人化を検討する際に理解しておきたい基礎知識を紹介します。

そもそも「医療法人」とは?

医療法人とは、病院や診療所などの開設を目的として設立される法人です。医療法人には公共性や公益性が要求されることから、積極的に利益追求できない特徴を持ちます。

医療法人の主な形態は、「社団医療法人」と「財団医療法人」の2種類です。下表は、各形態の概要を示します。

社団医療法人
法人の実態が社団(同じ目的のもとに複数人が集合した団体)である医療法人
財団医療法人
個人もしくは法人が無償提供する財産をもとに設立される医療法人

医療法人の大多数は、社団医療法人に該当します。
社団医療法人はさらに、出資持分に関する定めを定款に設ける「出資持分のある医療法人」と、定めを設けない「出資持分なし医療法人」に分けることが可能です。

医療法人と個人クリニック・株式会社の違い

医療法人と個人クリニックでは、医師の立場が異なります。
医療法人における医師は理事長(医療法人の代表者)・個人クリニックにおける医師は個人事業主として、病院の運営に携わることが必要です。

医療法人と株式会社では、配当の可否が異なります。
株式会社では株主に対し、任意の配当を行うことが可能です。
医療法人では出資者への配当および配当に類似する行為が、医療法で禁止されます

なお、医療法人では、医療行為以外の事業を行うことが不可能です。
医療法人の代表者である医師が副業の収益を法人として受け取るためには、「MS法人」と呼ばれるプライベートカンパニーを介在させる必要があります
MS法人は営利を目的とする法人であるため、株主への配当や内部留保を行うことも可能です。

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医療法人化のメリット6つ

医療法人化することには、節税・資産形成にもつながりやすい税制上のメリットがあります。
しかし、税制以外にも所得分散・生命保険掛け金の経費処理・院長の退職金の経費処理など多くのメリットがあることも忘れてはなりません。

ここからは、医療法人化する具体的なメリットを6つ紹介します。

税率格差による高い節税効果が期待できる

個人事業主として病院を運営する医師の所得には、所得税と住民税が課されます。一方、医療法人の所得は、法人税の対象です。
2022(令和4)年6月現在、法人税の最高税率は23.4%と所得税・住民税の合計税率と比較して低く、格差分の節税を図れます

※出典:国税庁「法人税の税率

【所得税の速算表】


課税される所得金額
税率
控除額
195万円以下
5%
0円
195万円を超え330万円以下
10%
97,500円
330万円を超え695万円以下
20%
427,500円
695万円を超え900万円以下
23%
636,000円
900万円を超え1,800万円以下
33%
1,536,000円
1,800万円超
40%
2,796,000円


※出典:国税庁「No.2260 所得税の税率

【住民税の計算式】

課税される所得金額
税率
控除額
一律
10%
0円

また、法人税の税率は所得に応じて変化しません。
そのため、年間の税金額を事前に予測しやすく、収支の安定化を図れます。

給与所得者控除が受けられる

医療法人化にすれば、理事長として法人から給与(理事長報酬)を貰えるようになります。
そうすると、サラリーマンの強みの1つである「給与所得控除」を受けられるようになります

【給与所得控除額一覧】

収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
控除額
162万5千円以下
55万円
162万5千円を超え180万円以下
収入金額×40%-10万円
180万円を超え360万円以下
収入金額×30%+8万円
360万円を超え660万円以下
収入金額×20%+44万円
660万円を超え850万円以下
収入金額×10%+110万円
850万円超
195万円(上限)

※出典:国税庁「No.1410 給与所得控除

例えば、理事長の報酬が2,000万円の場合、給与所得控除は上限いっぱいの195万円となります。
そのため、課税対象は1805万円に下がります。

給与所得控除による恩恵は、非常に大きいのではないでしょうか。

親族を役員にして所得を分散できる

医療法人化して配偶者や子どもなどを役員にすると一定の役員報酬を支払えるため、所得を分散可能です。
例えば、「院長80万円」を「院長50万円、役員にした配偶者30万円」とした場合、世帯単位の節税を図れる可能性もあります

ただし、医療法人の税負担を不当に減少させる目的で、高額な役員報酬を設定することは不可能です。
親族の役員報酬は職務内容や責任の重さなどに応じて、妥当な金額に設定しましょう。

生命保険を法人経費にできる

病院を安定的に運営するためには理事長の万が一に備えて、まとまった金額の生命保険に加入することも必要です。
医療法人化すると、生命保険料の一定額を医療法人の経費として計上することが認められます。

個人クリニックで生命保険料を支払う場合は、多少の生命保険料控除を受けられる程度です。
医療法人化して経費として計上する場合のほうが、多くのお金を手元に残せる可能性が高いと言えます。

なお、医療法人においてどの程度の生命保険料を経費として計上できるかは、加入する生命保険の種類に応じてさまざまです。
死亡保険金が支払われる生命保険の場合は「誰が受取人か」によっても計上できる金額が変化するため、注意しましょう。

生命保険を使用して過剰な節税を図ってしまうと、医療法人の財務状況が悪化します。
生命保険を利用して適切に節税を図るためには、専門家への相談がおすすめです。
もちろん、インベストメントメントパートナーズでも生命保険の相談に対応しているため、ぜひお気軽にお問い合わせください。

院長の退職金を法人経費にできる

退職金は、退職する従業員に対して事業主(雇用主)から支払われるお金です。
個人で開業している場合は自身が事業主となるため、退職金を受け取ることができません。
しかし、医療法人の理事長が退任する時には、役員退職金を支給することが可能です。
また、適正な金額であれば全額を法人経費とすることもできます。

さらに、院長が退職金を受け取る場合、その退職金は退職所得となるため、所得税の負担が下がります
このような法人のメリットを活かした資産形成は、非常に有効です。

社会的信用力が向上する

病院経営と個人の家計を明確に区分することで、経営の健全化が向上します。
適正な財務管理をしておけば、金融機関等への対外的信用も向上するでしょう。

体制が変われば気持ちも変わり、あらゆる事柄が良い方向に動くケースも多くあります。

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医療法人化のデメリット4つ

医療法人化には多くのメリットがある一方で、当然デメリットも存在します。
医療法人化を検討する際は、メリットだけを考えるのではなくデメリットも十分に理解したうえで、適切な判断を行う必要があるでしょう。

ここからは、医療法人化のデメリットを4つ紹介します。

また、インベストメントパートナーズでは、メリット・デメリットのバランスを考えながら、クライアント様にとって最善の方法を提案しております。医療法人化を少しでも検討している場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

持分なし医療法人しか設立できない

2022(令和4)年6月現在は出資持分のある医療法人を設立できず、これから医療法人化する場合は、出資持分なし医療法人を設立する必要があります。
出資持分なし医療法人では解散した際の剰余金が、国・地方自治体・他の医療法人などに帰属します。
例えば、300万円を元手に医療法人を設立し、1,000万円の財産がある状態で解散しても、返還を受けられません。

なお、医療の安定を図る目的から、医療法人の安易な解散は不可能です。
「後継者がいない」「経営状態が悪い」などの理由で解散を検討する場合は事前に地方自治体の担当課に相談し、認可を受ける必要があります。

余剰金の配当が禁止となる

医療法人のお金の使い道は厳しく制限されており、配当を行うことが禁止されます。
また、以下の行為も「配当類似行為」として制限されるため、注意しましょう。


● 正当な理由なく、役員などにお金を貸す

● 役員などの債務を引き受ける

● MS法人から貸借する資産に対し、過大な貸借料を支払う

医療法人の利益は原則、設備投資・施設の改善・適正な報酬の支払いなどに充てることが必要です。そのうえで発生した余剰金は、内部留保金として積み立てる必要があります。

接待交際費の取り扱いが複雑となる

個人クリニックの場合、事業に直接関係する接待交際費は全額、経費として計上できます。
しかし、医療法人の場合は経費として計上できる金額に上限があるため、注意しましょう

出資金に準ずる額(※)が1億円以下の医療法人の場合は上限800万円まで、接待交際費を経費として計上できます。
また、接待交際費のうち医療法人外部の人との会合などで支払った飲食費は1人あたり5,000円まで、800万円とは別枠で、経費としての計上が可能です。
出資金に準ずる額が1億円を超える医療法人では、飲食費の50%しか経費として計上できません。


※出資金に準ずる額の計算式
(純資産-当期利益(もしくは+当期損失))×60%

運営管理の複雑化による業務負担が大きい

医療法人の運営管理も、個人クリニックと比較して複雑です。例えば、医療法人を運営する際には都道府県知事に対して、定期的に以下の書類を届出する必要があります。


● 事業報告書等届

● 登記完了届

● 役員変更届

また、医療法人を運営するうえでは、定期的に社員総会・理事会の開催・監事による監査を行わなければなりません。法人名や所在地を変更する際には、所定の手続きも必要です。

さらに、医療法では医療法人の不正が疑われる場合に、都道府県知事による立入検査が認められます。


第六十三条 都道府県知事は、医療法人の業務若しくは会計が法令、法令に基づく都道府県知事の処分、定款若しくは寄附行為に違反している疑いがあり、又はその運営が著しく適正を欠く疑いがあると認めるときは、当該医療法人に対し、その業務若しくは会計の状況に関し報告を求め、又は当該職員に、その事務所に立ち入り、業務若しくは会計の状況を検査させることができる。

※引用:e-gov法令検索「昭和二十三年法律第二百五号医療法

医療法人化する際には立入検査などが強化される可能性も考慮し、より運営管理の透明性に注力する心掛けが必要でしょう。

医療法人化の適切なタイミングは?

医療法人化は、個人事業主として概算経費を使用できなくなるときに行うことが一案です。
概算経費とは、医薬品費やテナント料を収入に応じて認められる概算金額により、経費計上することを指します。

個人事業主が概算経費を使用するためには、以下の条件をともに満たすことが必要です。


● 年間の社会保険診療収入が5,000万円以下

● 自由診療を含む総収入が7,000万円以下

上記を満たさなくなったときには概算経費の恩恵を受けられないため、医療法人化を検討しましょう

なお、医療法人化の適切なタイミングは、医師の将来設計や診療科によっても異なります。
実務上は専門家と相談しつつ、計画的に医療法人化を進めることがおすすめです。

まとめ

医療法人化には節税効果が期待されること、社会的信用力が増すことなどのメリットがある反面、デメリットや注意点も伴います。
そもそも医療法人化すべきかや個人事業主をやめる最適なタイミングは医師の将来設計や状況によって異なるため、専門家への相談がおすすめです。

「インベストメントパートナーズ」では、クライアント様のご希望や病院の状況を考慮したうえで、最善と思われる方法を提案しております。
医療法人化に少しでも関心を持つ方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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